栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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変敗油の調理に及ぼす影響 (第32報)
油脂の種類と疲れ度合
梶本 五郎向井 克憲
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1965 年 17 巻 5 号 p. 323-327

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抄録

180℃で大豆油, なたね油, ごま油, 鯨油, オリーブ油, やし油, ラード, ヘットを加熱し, 加熱時間と疲れ度合, 脂第17巻 第5号肪酸重合の程度および栄養価を調べた。その結果,
1. 加熱時間の経過とともに各油脂の泡延距離は次第に拡がり, なかでも鯨油, ラード, オリーブ油, やし油は短時間にて拡がってくる。すなわち疲れが早く, ごま油, 大豆油, なたね油, ヘットは疲れがおそい。
2. 加熱油の泡延距離と酸価の増加傾向とはよく一致し, AOM安定性試験ではオリーブ, やし油の両油脂が安定なるも, 加熱時は疲れやすいといった異なった傾向を示す。
3. 疲れ度合の異なる加熱油脂肪酸のカラムクロマトグラムを行ない, 脂肪酸重合の程度を調べた結果, 各油脂の疲れがいちじるしくなるにしたがい, モノマー部は減少し, ダイマー部, 2次生成物部の蓄積量は増加した。
特異な泡立ちを示すやし油は, 未加熱油でもダイマー部は10%をしめている。しかし持続性の泡立ちでなく, 持続性の泡立ちは2次生成物部によると考えられる。
4. 各油脂の疲れがいちじるしい程, 白ネズミの体重増加量は少なく, 毛並はあれ, 持久力にとぼしい。ただし鯨油のみは加熱油の方が未加熱油に比べ栄養価が高い。
5. カラムクロマトグラフィーで分別した大豆油脂肪酸のモノマー部, ダイマー部, 2次生成物部の各エステルを未加熱油に5%添加し, 基本飼料に15%になるよう配合し, 飼育した結果, モノマー部, ダイマー部エステルはいずれも栄養価に変化なく, 2次生成物部エステル投与群のみ体重の増加量は少ない。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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