ホタテ, ウバガイ, エゾアワビなどの貝類筋肉を凍結乾燥し, さらにこれを水戻しして, これらの操作中に起こるATPおよび関連化合物の変化を追求した。その結果, 凍結乾燥の段階では何れの筋肉の場合もこれらの成分含量は新鮮筋のそれと全く一致して殆んど変化の無いことを認めた。また, 水戻しに際しては, ホタテ, ウバガイではかなりよく復元されたが, アワビでは復元性はきわめて悪かった。さらに酸溶性ヌクレオチドについては, ATPはきわめて短時間のうちに変化して主としてAMPの蓄積するのが認められ, さらに浸漬時間を長くすると, AMPからHxRの生成するのが認められた。また, 凍結乾燥品をデシケーター中で5ヵ月にわたり保存した場合でも変化はなかったが, これを水戻しすると同時にATPの急速な変化が認められた。したがって乾燥食品を水分をさけて保存した場合は筋肉中に含まれる酵素もかなり長期にわたって活性を復元できる状態にあることを知った。