栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
魚貝類中のCarnosine様物質の微生物学的定量
真野 つい子千住 紀子
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1969 年 22 巻 3 号 p. 164-167

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抄録

魚貝類中に分布するCarnosine様物質をPPCによって分別し, Carnosineに対するE. coli変異株の標準発育曲線を用いてその微生物学的定量を試みた。 その結果, 魚貝類中PaAおよびβ-Alanineは多くのものに分布しているが, Carnosine様物質を含有するものは余り多くなかった。
あわび, くるまえび, 水いかなどにはβ-AlanineとCarnosineの中間に菌発育帯がみられた。 この物質がβ-AlanineまたはCarnosineと全然別個の物質であるかどうかは今回は追求することができなかった。
以上を総括すると
1) うなぎ, あなごのごとき比較的身の軟らかい魚にCarnosine様物質が多く, 貝類では赤貝, しじみ, さざえに比較的多量に含有され, 甲いか, 水いかにも相当量含まれている。 鯛, さば, あじなどには比較的少量しか分布していないことが判明した。
2) くるまえび, あわび, 水いかについてはRf 0.27-0.28のところに別な発育帯がみられた。 これがCarnosine, β-Alanineとは別の物質であるかどうかについては現在のところ不明である。
3) Carnosineの生化学的意義については, 現在なお不明であるが, ATP aseの酵素作用の活性化にCarnosineが何らかの影響をしているとの報告9) もあり, それが主に筋肉中に分布していることにからんで, 興味あることと思われるので, 将来の問題としたい。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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