栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
アミノ酸栄養とニコチン酸代謝の研究
村田 希久
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1969 年 22 巻 6 号 p. 353-360

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抄録

完全アミノ酸混合10%食より必須アミノ酸1個ずつ除いた各必須アミノ酸欠食を白ネズミに強制投与5日目の肝臓TPase活性の完全アミノ酸食群のそれに対する割合と, 尿中MNAの完全食群のそれに対する割合の関係はFig. 4にしめしたようによい相関性をしめし, トリプトファン以外の必須アミノ酸欠食投与時, 体たんぱく質の合成に利用されなかった余剰トリプトファンを分解すべくTPase活性の誘導がおこり, 分解されたトリプトファンはNADを経て尿中にMNAとして排泄されることが認められた。
また必須アミノ酸欠食時のTPase活性と尿中窒素の完全食群のそれらに対する割合の相関もFig. 11にみられるように, トリプトファン欠食の場合を除いてはよく相関し, 肝臓TKase活性と尿中窒素についてもFig. 12にしめすようで, TKase活性は (種々の要因に支配されるためか, 相関係数は幾分小さいが) 相関することが観察された。
つぎに各必須アミノ酸欠食群の, 完全食群のそれに対する割合 (Fig. 13), 同じくTKase活性の割合 (Fig. 14) からも明らかなように, トリプトファン以外の各必須アミノ酸欠食投与時のTPase活性の上昇が副腎摘出白ネズミにおいてもおこることは利用されなかったトリプトファンが基質誘導の原因となっていることがわかると共に, 欠となるアミノ酸の種類によってTPase誘導の程度が異なることが認められた。また, 肝脂肪増量 (Fig. 15) の程度も欠アミノ酸の種類によって異なるのはアミノ酸の特異性による結果と推定される。
また必須アミノ酸欠食を自由食とするとき摂取量が減退するのは肝臓酵素活性の増大などが食欲中枢への指令の役を果たすものとも想定され, これらの点については将来更に検討すべき興味ある問題である。

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