栄養と食糧
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納豆製造過程における大豆蛋白質の変化 (第1報)
総窒素・水溶性窒素・TCA可溶性窒素・アミノ態窒素・ペプチド態窒素について
草野 愛子
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1969 年 22 巻 9 号 p. 615-620

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抄録

納豆製造過程における大豆蛋白質の変化を明らかにする目的をもって
1 次の納豆製造過程において経時的に水分, 灰分, 総窒素を測定した。
(1) それぞれ3種の納豆菌を接種して製造した納豆および市販納豆
(2) それぞれ2種の納豆菌を接種し, 通気, 撹拌を行ないながら製造した液状納豆
2 原料大豆, 蒸煮大豆, それぞれ2種の納豆菌を接種した納豆および市販納豆について各種形態窒素を測定した。
その結果
1 (1) 総窒素変動の究明においては乾物中総窒素よりも, 総窒素に対する灰分の比による方がより適当であると考えられた。
(2) 納豆製造過程において総窒素は次第に増加し, 培養18時間で最高を示し, その後減少した。市販納豆についても同様の傾向が認められた。
(3) 通気して実験的に製造した納豆では総窒素の経時的変動は認められなかった。
これらの結果から納豆製造過程において何らかの理由による総窒素の変動すなわち総窒素がいったん増加し, 後減少する傾向は認められたが, その量はきわめて僅かであると推察された。
2 (1) 納豆製造過程においては水溶性窒素の変動が著しい。すなわち蒸煮によって原料大豆の水溶性窒素は大部分不溶性となるが, 納豆では再び水溶性となり, いずれの納豆でも原料大豆のほぼ85%まで増加した。水溶性窒素中蛋白態窒素とTCA可溶性窒素の割合は2種の納豆でかなり相違した。
(2) 120℃, 100分の蒸煮による大豆蛋白質の分解は少なく, 分解の程度は大部分ペプチドまでの弱いものと考えられた。
(3) 納豆菌の培養によってTCA可溶性窒素, アミノ態窒素, ペプチド態窒素は著しく増加するが, 特にアミノ態窒素の増加は著しい。2種の納豆についてアミノ態窒素とペプチド態窒素の割合には差があり, 市販菌納豆においてアミノ酸の分解がより大であると考えられ, 同一の納豆菌による市販納豆についても同様の傾向が認められた。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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