栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
電子線照射による厚焼の貯蔵
上野 照雄北村 禎三
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1972 年 25 巻 5 号 p. 376-379

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抄録

電子線照射による水産ねり製品の貯蔵について, 厚焼を試料として実験を行ない, 次の結果を得た。
(1) 非照射試料を貯蔵すると表層腐敗した。28℃で貯蔵した場合は3日目より粘質物およびかびの発生がみられ, 臭いは2日目で少し変化を認め, 3日目以降は明らかに異臭が感じられた。
(2) 吸収線量と照射臭および色の変化との関係を調べた。照射臭は600krad以上で発生したが, 500krad以下ではほとんど認められず, とくに400krad以下では非照射試料との差は認められなかった。色の変化については, 400krad以上になると退色する傾向が観察され, 1,000kradでは黄色はほとんど消失し, 試料は白色化した。
(3) 500krad照射試料の貯蔵中における一般生菌数および酸度の変化を調べた。その結果, 5MeVの電子線照射は厚焼の表層殺菌に有効であることが判明した。
(4) 500krad照射によって試料の可食期間を延長することができた。延長日数は28℃で2日, 20℃で18日, 8℃で21日, 1℃で35日以上であった。このように照射後低温に貯蔵するほどその貯蔵効果は大であった。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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