抄録
メチオニンの抗酸化機構を明らかにする目的で, LAを含む自動酸化系および酸化リノール酸から分離したLAHPOあるいはLASPを含む系において, それぞれメチオニンとこれらの化合物との相互作用を検討し, 次の結果をえた。
1) メチオニンはLA系のPOVの上昇をおさえ, LAHPO系のPOVを著しく低下させた。
2) LAHPO系においてメチオニン量は反応の進行とともに減少し, この減少はPOVの低下と完全にパラレルであった。そしてこの反応の結果メチオニンは, メチオニンスルフォキシドに酸化された。
3) LAHPO系におけるメチオニンの存在は系の酸度を上昇させたが, ヒドロキシル基の含量には差が認められなかった。
4) LA系およびLAHPO系におけるメチオニンの存在は系の酸素吸収を何等上昇させなかった。
5) 以上の結果および前報14)の結果を総合して, ROO・がメチオニンのメチルメルカプト基の-S-を介して電荷移動型化合物を形成したのち, 電子をうばって-O-O-結合を開裂せしめてメチオニンスルフォキシドを与え, みずからは不活性安定化合物になることによって酸化の連鎖反応を停止させるとするメチオニンの抗酸化機構を提案した。