栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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コレステロールの比色定量法の比較検討
阿部 重信金田 尚志
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1975 年 28 巻 2 号 p. 98-100

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抄録

標品のCSおよび試料のCSジギトニドの90%酢酸溶液のZurkowski試薬による発色はいずれも620mμに吸収の極大が認められ, それらのCS含量が等しい場合には600~660mμにおいて吸収曲線はまったく一致する。 また, これらの呈色は室温23℃では20分後に最大に達し, その褒20~30分間安定である。
ジギトニン沈殿法によるCSの定量は, その濃度が低い場合には回収率が著しく悪くなることが知られている7)。 著者らの実験でも, この事実が認められ, さらにCSジギトニドが多い場合には90%酢酸溶液への溶解性が悪くなることを考慮すると, 再現性のよい結果を得るためには, 比色液が1.5mlのとき, CSの含量は0.05~0.15mgの範囲であることが望ましい。
著者らの改良法を他の代表的な定量法と比較するため, 白ネズミの血漿と精度管理用凍結乾燥プール血清Concera (日水製薬製) を用いて定量した結果をTable 1に示した。この改良法は, 理論的に最もすぐれた比色定量法として用いられてきたS-W法にくらべて, それぞれの値がほぼ等しいことが明らかである。 この定量法は, CSジギトニドをつくるところまでは, Nieft-Deuel8)法を参考にして,その沈殿の洗浄や乾燥を迅速に操作できるようにS-W法を改良し, CSの発色についてはZ法を利用して, L-B反応における煩雑な操作を簡略化したものである。 著者らの実験室の例では同一精度を保ちつつ, 1/3~1/2の時間短縮に成功している。 AbellKendall法は最も低い値を示し, Z法, Z-H法とZakらの方法はいずれも高い値を示したが, 個々の値には同じ傾向があることが認められた。 3種の方法が高い値を示す傾向のあることは, 多くの研究者が認めているととであり7) 9), 研究の目的によっては十分注意しなければならない。 しかしながら, Z法の簡使さは柴田ら9)も述べているように非常にすぐれたものであり, 血中CS低下物質の試験などに際しては, 臨床面での使用とともにその威力を発揮するものと考える。
CS代謝の研究においては, 血液をはじめ各組織などの総および遊離型CS値を正確に求めることが要求されるが, 実験室内で数多い試料を取扱う場合には, 現在でもジギトニン沈殿法が最も実用的であることに変りなく, 著者らの改良法はS-W法に代るものと期待できる。 なお, 本法では操作の簡略化のため, 試薬の添加に際して注射筒を多用したが, 比色法では満足すべき精度が得られる。また, 近年性能のよい分注器が入手できるので, 利用できれば一部これを使用するのが便利である。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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