抄録
長期間PMD施設にはいり, 一般病人食を給与されているD型男子患者の栄養状態を観察し, 次のような結果を得た。
1) PMDのカロリー, たん白質摂取量は, 対照者に比べて著しく少なかったが, 単位体重当りに換算するとその差は認められなかった。 しかし動物性たん白質比は, 本症患者のほうが優っていた。
2) 摂取カロリーと消費カロリーは辛うじてバランスされていたが, 成長, ストレスなどに対する安全率を考慮すると十分であるとはいえない。 そのうえ, N蓄積率も劣る傾向がみられた。
3) 本症患者の血中たん白質保持状態は, 良好であるとはいえない。 すなわち, 全血比重, 血清比重, 血清尿素Nが対照者に比べて明らかに低かった。 また血中遊離アミノ酸濃度では, Val, Leu, Ileなど必須アミノ酸群が低い, いわゆる飢餓状態に近似した様子がみられた。
4) 身長, 体重発育は6歳ごろからすでに劣っており, 体重発育は思春期に著しい発育遅滞を認めた。
5) 以上の結果から, PMD施設における患者の栄養管理のあり方9) を再検討する必要があると考える。