栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
魚肉の異臭発現における揮発性塩基と揮発性酸の意義
菊池 武昭和田 俊鈴木 平光
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1976 年 29 巻 3 号 p. 147-152

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抄録

水産食品の化学的検査法に官能検査の特長を加えるための基礎的研究として, 揮発性塩基と揮発性酸の異臭発現に対する意義を調べた。
1) 魚肉鮮度低下時の揮発性塩基量と揮発性酸量の関係をにおいの変化と関連させて観察し, 異臭発現に酸の共存が必要なことを推定した。
2) 鮮度低下生魚肉から, ギ酸, 酢酸, プロピオン酸, n-, iso-酪酸, n-, iso-吉草酸, n-カプロン酸を確認し, 量的に酢酸が主要であること, 経時的にプロピオン酸, 酢酸, n-酪酸, iso-吉草酸が増加することを確認した。
3) 確認された脂肪酸8種および揮発性塩基4種の閾値を測定し, 生成量と閾値の比 (におい値) の比較から, 異臭発現にトリメチルアミン, 酢酸, 酪酸, 吉草酸が高い寄与度を示すことを確認した。
4) トリメチルアミンと酢酸や酪酸の混合により, においが煮熟魚肉から鮮度低下魚肉の異臭への変異があること, 酢酸に酪酸や吉草酸などが共存するときに, においが強化されることで異臭発現機構の一部を明らかにした。参考として, 塩基類の揮発性を付記した。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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