1976 年 29 巻 6 号 p. 341-346
1) 米ぬかの水抽出液は, トリプシン, α-キモトリプシンおよびペプシンの作用を阻害した。
2) トリプシン阻害物質が非耐熱性高分子であるのに対して, ペプシン阻害物質は耐熱性低分子としての性質を有していた。
3) ペプシン阻害物質は, 米ぬか中の主要な含リン成分であるフィチン酸 (myo-inositol hexaphosphate) であると判断され, 玄米, 白米, 米ぬか, 米胚芽, ダイズおよびコムギふすまのフィチン酸含量とこれらの水抽出液が示すペプシン阻害度との間には高い相関関係が認められた。
4) フィチン酸によるペプシン作用の阻害は, フィチン酸がペプシンの至適pH近辺で正に帯電した基質たん白質と相互作用し, ペプシンの作用しにくい状態に変換させる結果として誘起されるものと推定された。