栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
女子学生の水泳合宿期の栄養摂取状況と血液値
井上 寿子中村 正
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 29 巻 7 号 p. 383-390

詳細
抄録

体育を専攻している女子学生2グループについての夏季7日間の水泳合宿訓練期の栄養摂取状況と血液値を測定した。そして栄養摂取量が低かった初年度のグループと, それより摂取量が高かった次年度のグループで比較し, 運動と摂取栄養, 血液値の3者間の関係について追求した。なお次年度には, 鉄剤の投与も試みた。その結果の大要は, 次のとおりである。
1) 合宿期の体重当りの摂取エネルギー, たん白質, 動物性たん白質は, それぞれ初年度のグループでは45.2±2.2Cal/kg, 1.2±0.1g/kg, 0.45/±0.03g/kg, 次年度のグループではそれぞれ49.6±4.6Cal/kg, 1.6±0.1g/kg, 0.91±0.05g/kgであった。
2) Hb量, Ht値, 血清たん白量の合宿末日値を初日値に比べると, 初年度のグループではいずれも有意に低下したが, 次年度のグループでは低下しないで, Ht値はむしろ上昇した。この違いは, 1) の栄養摂取の差に主因するものと考えられる。
3) Hb量, Ht値は, いずれもその合宿初日値と末日値の変動との間に負の相関関係を示し, 末日の低下は初日に高い者では大きく, 初日に低い者ほど小さいという, いわば生体のホメオスターシス的現象がうかがわれた。回帰線の高さや傾きの度合には両年度グループで差があり, 栄養摂取の良好な次年度グループが高位にあり, 傾きも小さかった。この結果から著者は, このような回帰線の比較によって訓練の負担度や栄養の効果を総合的に評価する試みを提唱した。
4) 血液指数 (MCHC) は, 合宿中にHb量その他の血液値が低下した初年度のグループにおいて, かえって上昇の傾向を示した (この点で著者は既報の文献値を併せ考察し, 運動負荷に対し栄養の摂取が不十分でHb量が低下する場合に血液指数を高めるような, なんらかの機転がおこることを推論した)。
5) 鉄剤の影響 (硫酸鉄160mg) は, 少なくとも合宿7日間では認められなかった。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top