栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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脂肪酸組成あるいは分子内脂肪酸配位を異にする油脂のin vitro消化において生成されたミセル溶液の組成
山本 良郎米久保 明得飯田 耕司土屋 文安亀高 正夫
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1979 年 32 巻 3 号 p. 179-186

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抄録

脂肪酸組成あるいは分子内脂肪酸配位の違いにより油脂の消化吸収性が異なることを, 消化過程で生成する各脂質成分のミセル溶液への移行の面から裏づけるべく, 油脂の種類を変えたin vitro消化により得られたミセル溶液の性質につき検討した。すなわち人乳脂肪, 牛乳脂肪, 牛脂分別油, パーム分別油, ヤシ油, 豚脂, エステル交換豚脂あるいは微水添豚脂を含む乳化液を消化後, 100,000×gで遠心分離して得られたミセル溶液につき脂質画分を測定した。
ミセル溶液中のMG, FFAおよびFA塩の合計量はヤシ油>人乳脂肪>牛乳脂肪≒微水添豚脂>豚脂>パーム分別油≒エステル交換豚脂>牛脂分別油の順であった。
総脂質中のC12:0~C18:0の飽和脂肪酸については, 炭素鎖長が長くなるほどミセル溶液中への当該脂肪酸の移行率が低下し, 同じ炭素数18の脂肪酸であれば, 不飽和脂肪酸の移行率のほうが飽和脂肪酸のそれより高かった。ミセル溶液中へのC14:0, C16:0, C18:0の移行率は, 2位結合比の高い油脂ほど高い傾向を示した。
人乳脂肪と牛乳脂肪については, 脂肪酸の形態別に検討した。飽和, 不飽和を区別せずに脂肪酸とMGを比較した場合には, 両脂肪ともミセル溶液中への移行率はFFA>MG>FA塩の順であり, またMG, FFAおよびFA塩の合計のミセル溶液中への移行率は, 人乳脂肪で51.7%, 牛乳脂肪で48.9%であった。飽和脂肪酸については, 両脂肪ともMGの場合にミセル溶液中への移行率が最も高く, FA塩で最低であったが, 不飽和脂肪酸については, FFAのほうがMGの場合よりミセル溶液中への移行率が高かった。飽和脂肪酸については, MGのミセル溶液中への移行率は人乳脂肪のほうが高く, 一方FFAとFA塩のそれは牛乳脂肪のほうが高かった。遊離の飽和脂肪酸および塩を形成している飽和脂肪酸のミセル溶液中への移行率が牛乳脂肪で高かったのは, 消化の結果生成したモノオレインの量が牛乳脂肪のほうが多かったためと推定された。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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