栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
ラットの窒素代謝におよぼす環境温度および遺伝的素因の影響
磯本 八重子山下 かなへ芦田 淳
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1980 年 33 巻 5 号 p. 299-304

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抄録

15%カゼイン飼料を与え, 2種類の系統の異なったラットを用いて環境温度を変化させた場合に, 窒素代謝が異なるかどうかを試みた. その結果, 以下の結論を得た.
1) CDラットは23℃でも10℃でも体重増加量に差はなかったが, Fラットの場合には10℃での体重増加量が23℃の場合に比べて減少した。
2) 100g体重あたりの飼料摂取量を測定してみると, 10℃ではFラット, CDラットともに同程度増加した。したがって, 10℃でFラットの体重増加量が減少したのは, 飼料摂取量が減少したためではない。
3) 100g体重あたりの窒素排泄量については, 23℃に比し10℃で排泄量が増加した. その増加の程度はFラットのほうが大きかった。また, 窒素摂取量に対する窒素排泄量の比はFラットのほうが大きく, 10℃では差が開く傾向が認められた。
4) 23℃に比し10℃では, Fラット, CDラットともに100g体重あたりのクレアチニン, クレアチン排泄量が促進され, とくにFラットの排泄量の増加は大きかった。
5) 100g体重あたりのアラントイン排泄量も低温で増加したが, とくにFラットの場合に増加程度は大きかった。したがって, Fラットの場合には核酸の分解が促進されているようである。
6) 以上の尿中成分を分析した結果を総合して考えると, Fラットの場合に低温で体重増加量が小さくなったのは, 体たん白質の分解がより促進されたためであろうと考えられる. そして, アラントイン排泄量もFラットの場合に10℃で増加したので, RNAの分解が低温で促進されたと考えられる。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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