栄養と食糧
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無菌白ネズミと通常化白ネズミの糞中各態窒素化合物および非たん白部アミノ酸組成について
岩渕 明秋場 克彦務台 方彦神立 誠
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1981 年 34 巻 3 号 p. 211-219

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抄録

たん白飼料 (カゼイン18%) および無たん白飼料を, それぞれ無菌白ネズミと通常化白ネズミに与え, 糞中窒素化合物と, とくに糞中非たん白部アミノ酸を分析した。その結果を要約すると次のとおりである。
1) たん白飼料期および無たん白飼料期のいずれにおいても, 飼料摂取単位当たりの糞中排泄窒素量は, 無菌白ネズミ区が通常化白ネズミ区より有意に高かった。
2) たん白飼料期および無たん白飼料期のいずれにおいても, 無菌白ネズミ区が通常化白ネズミ区より, ペプチド態, アミノ態, アミド態および尿素態の各窒素排泄量が有意に高かった。純たん白態窒素排泄量は, これらとは逆に, 通常化白ネズミ区のほうが有意に高かった。アンモニア態窒素は, たん白飼料期では通常化白ネズミ区のほうが有意に高かったが, 無たん白飼料期では, 無菌白ネズミ区と通常化白ネズミ区の間に有意差がなかった。
3) 通常化白ネズミ区の尿素態窒素排泄量は, 無菌白ネズミ区に比べて非常に低く, 0.4mg/日以下であった。
4) たん白飼料期における, 無菌白ネズミ区の糞中主窒素化合物は, ペプチド態およびアミノ態窒素であって, 通常化白ネズミ区では, 純たん白態およびペプチド態窒素であった。無たん白飼料期では, 無菌白ネズミ区の主窒素化合物は, アミノ態, ペプチド態および純たん白態の各窒素であって, 通常化区では, 純たん白態窒素であった。
5) 糞中非たん白部全アミノ酸 (g/16gN) は, たん白飼料期では, ヒスチジン, シスチン以外の15種のアミノ酸が, また, 無たん白飼料期では, シスチン以外のすべてのアミノ酸が, 無菌白ネズミ区のほうが通常化白ネズミ区より有意に高かった。
6) 糞中非たん白部全アミノ酸組成 (g/16gN) は, 無菌白ネズミ区では, たん白飼料期と無たん白飼料期でほぼ同じアミノ酸パターンであったが, 通常化白ネズミ区では, 異なるアミノ酸パターンを示した。
7) たん白飼料期における, 無菌白ネズミ区の糞中非たん白部全アミノ酸 (g/16gN) で, 最も高い必須アミノ酸はリジンであった。可欠アミノ酸ではグルタミン酸が最も高かった。無たん白飼料期では, 必須アミノ酸ではスレオニン, 可欠アミノ酸ではグルタミン酸が最も高かった。通常化白ネズミ区では, 両飼料期のそれぞれにおいて, 必須アミノ酸ではリジン, 可欠アミノ酸ではグルタミン酸が最も高かった。
8) 糞中遊離アミノ酸 (g/16gN) は, 両飼料期のそれぞれにおいて, メチオニン以外のいずれのアミノ酸も, 無菌白ネズミ区が通常化白ネズミ区より有意に高かった。
9) たん白および無たん白飼料期のそれぞれにおいて, 糞中遊離アミノ酸 (g/16gN) で, 最も高い必須アミノ酸は, 両白ネズミ区のいずれにおいてもリジンであった。可欠アミノ酸ではグルタミン酸が最も高かった。以上の結果から, 消化管内微生物は食餌および内因性たん白質, ペプチドおよぴアミノ酸に対して, 作用していることが示唆された。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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