1981 年 34 巻 4 号 p. 335-340
高糖質食または高脂肪食で飼育したラットの副睾丸脂肪組織の脂肪酸放出能について, PTUを投与する方法で甲状腺機能との関連を比較検討した。
1) 対照動物の甲状腺重量と腓腹筋ホモジネエトの酸素消費量は, いずれも高脂肪食群が高糖質食群よりも大きかった。PTU投与により両食餌群の甲状腺重量は増大したが, その肥大度には差がなかった。腓腹筋ホモジネエトの酸素消費量はPTU投与により高脂肪食群で著明に低下した。
2) 副睾丸脂肪組織のIn vitro脂肪酸放出能は, ノルエピネフリン無添加条件では両食餌群間に差がなかったが, ノルエピネフリン刺激性脂肪酸放出能は高糖質食群に比べて高脂肪食群で著明に高かった。
3) PTU投与により, ノルエピネフリン無添加条件での脂肪組織脂肪酸放出能は高脂肪食群で著明に低下した。ノルエピネフリン添加条件では, 両食餌群においてそれぞれの対照動物に比べ著しく低下し, 対照動物でみられた両食餌群間の差は軽減された。
4) 対照動物の絶食時血清遊離脂肪酸量は両食餌群間に差をみなかったが, PTU投与により高脂肪食群において著しく低下した。
5) 以上のことから, 高脂肪食によるラット副睾丸脂肪組織のノルエピネフリン刺激性脂肪分解能の増大は, 甲状腺機能の亢進が原因の一つであると示唆された。