1953 年 6 巻 3 号 p. 111-115
大豆より大豆乳を調製し, 牛乳の腕脂乳と比較して酸及び各種鹽類による凝固性の試験を行い, その一定量を凝固するに要する乳酸, 鹽酸, 各種カルシウム鹽及び各種中性鹽の最小量を決定し, またその場合のpHの影響を明らかにした。例えば大豆乳10ccを完全に凝固するに要するカルシウム鹽は無水物として鹽化カルシウム10.8mg (Ca3.9mg), 乳酸カルシウム24.3mg (Ca4.5mg) または硫酸カルシウム37.0mg (Ca10.9mg) である。しかしこの場合豫め大豆乳のpHを調節してpH6.8にしておけば凝固を生じない。牛乳は本試験の範圍ではカルシウム鹽によつて凝固しない。本試験の結果大豆乳は牛乳に比べて極めて凝固し易いものであつて, 少量の酸により或いは極く少量のカルシウム鹽によつても凝固する。また多くの可溶性鹽類を加えれば凝固を起す。故に大豆乳を牛乳と同じように長く乳状を保たしめるには庭理法につき特に注意を要する。