栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
農家食品のカルシウムに關する研究
(第5報) 海藻のカルシウムに就いて
川上 行藏相澤 壮吉檀原 宏
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1953 年 6 巻 3 号 p. 116-119

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抄録

(1) 海藻は無機成分, 特にCaの含量が多いので, その存在型態を化學的に検討した。用いた材料は, こんぶ, わかめ, ひじき, の3點てある。
(2) 胃の中の状態にならつて人工的に溶出試験を行つてみると, 胃て溶出するCaはほぼ, こんぶ60%, わかめ40%, ひじき50%位と推定される。
(3) アルコール, 水, 苛性ソーダ, 醋酸及び鹽酸の溶媒でそれぞれ順次に抽出すれば, 3點とも大體アルコール, 水に溶出したCaは全體のCaの10%, アルカリで溶出したCa (アルギン酸Caと推定される) は10~15%(この値は從來の報告にほぼ一致する), 醋酸に溶出したCaは25%位で, 残りは鹽酸で溶出された。
(4) 之等Caの化合型態は, 有機態と無機態になつているものと思われ, 有機態としてはペクチン或いはヘミセルローズである海藻酸とよばれる複雑な炭水化物に化合しているものと思われる。無機態には硝酸鹽, 燐酸鹽, 炭酸鹽等が考えられる。然しこの實験からは直ちに漸定することはできない。
(5) 胃で溶出するCaは, アルコール, 水, アルカリ及び弱酸に可溶型態のものに限られると思うが, それは全Caの約50%であつた。それ以外のものは強酸を用いなければ溶出しないので榮養上の効力は殆と期待し得ないと思う。
(6) 海藻のCaは牛乳のCaに比べては勿論の事, 他の食品のCaに比べても甚しくその利用率が低いので食事献立からCa攝取量を集計する場合, 他の食品のCaと同様に分析數値をそのまま計算に加える事は出來ないと思う。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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