抄録
結晶性トリプシン及びキモトリプシンを用いて卵白の消化に及ぼす加熱温度の影響をみるために, 生及び60°, 70°, 98℃10分間加熱した場合の蛋白質の消化率及びチロシンの遊離状態を研究し次のことをみとめた。
1. 蛋白質の消化率はトリプシン, キモトリプシン共に加熱の影響はみとめられなかつた。加熱温度の影響はトリプシンでは明らかであつたがキモトリプシンでは殆どみとめられなかつた。
2. 全チロシンの遊離状態はトリプシン及びキモトリプシンとも全窒素の消化率とほぼ同傾向を辿る。
3. 遊離チロシンの遊離状態はトリプシンでは, 生, 60°, 70℃ 加熱の場合は判然とした差はみとめられないが, 98℃ 加熱の場合は明らかに多い。キモトリプシンでは加熱温度の影響は殆どみとめられなかつた。
4. 結合型チロシンについてはトリプシンでは加熱の影響がみとめられるが, 加熱温度の影響は明瞭にみとめられなかつた。この傾向はキモトリプシンも大体同様であつた。