日本栄養・食糧学会誌
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ラット血清中の酵素, ホルモン, 糖, 脂質, および含窒素成分におよぼす亜鉛欠乏の影響
柏原 典雄丸山 博隆山下 佳子近藤 敏
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1983 年 36 巻 1 号 p. 5-13

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抄録

ラットに食餌性の亜鉛欠乏症を発現させ, pair fed対照群および自由摂食対照群との比較により, 血清中の亜鉛濃度, 酵素活性, ホルモン, 糖, 脂質, および含窒素成分量におよぼす亜鉛欠乏の影響を調べた。さらに回復実験も行ない, 亜鉛欠乏の影響が残るか否かも検討した。その結果
1) 亜鉛欠乏により血清亜鉛濃度は低下したが, その濃度低下は亜鉛摂取量の減少に対して敏感ではなく, 極端な欠乏下ではじめて認められた。また亜鉛添加により完全に回復した。
2) 血清AIP, GOT, GPT, LAP, LDHおよびアミラーゼのいずれも, その活性に影響を受けた。このうちAIP, LAP, およびアミラーゼ活性は低下し, 他は上昇した。アミラーゼの活性低下は摂食量不足の影響が考えられた。なお, LAPを除くいずれも, 亜鉛添加により回復した。
3) 糖, 脂質, および含窒素成分では, 尿素窒素, 尿酸, ビリルビン, コレステロール, トリグリセリド, およびβ-リポタンパクが影響を受けた。このうち明らかに亜鉛欠乏そのものの影響と考えられたのは尿素窒素の増加のみで, 他の変化はいずれも摂食量不足によるものとみられた。またこれらは亜鉛添加により回復した。グルコース, クレアチニン, およびリン脂質は変化しなかった。
4) T3, T4, テストステロン, およびインスリンのいずれも, 血清中濃度が低下した。このうちテストステロンとインスリンは, T3とT4よりも亜鉛欠乏の影響が大であった。またいずれも亜鉛添加により回復した。
5) 血清総タンパクは減少し, タンパク分画像中γ-グロブリンが増加した。αおよびβ-グロブリンの挙動は一定せず, 亜鉛欠乏の影響が定かでなかった。なお, 亜鉛添加により総タンパクは回復したが, γ- グロブリンは回復しなかった。
以上のように, 食餌性の亜鉛欠乏はラットの血清亜鉛濃度, 酵素活性, ホルモン, 脂質, および含窒素成分量に影響することがわかった。しかし亜鉛添加によりほぼ回復し, 一部を除き亜鉛欠乏の影響は残らなかった。

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