日本栄養・食糧学会誌
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卵白の泡立処理による熱凝固性の低下
西川 善之河合 文雄満田 久輝
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1984 年 37 巻 2 号 p. 129-137

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抄録

卵白の熱凝固性の低下条件および熱凝固の機構を解明する目的で研究を始め, 以下の結果を得た。
1) 生卵白を手動撹拌器, または電動撹拌機, ワーリソグブレソダーを用いて撹拌泡立を行なうと50倍水希釈下 (タソパク質濃度0.2%) で熱凝固しないことが判明した。
2) 泡立時, 加熱時のpH条件をpH2.0以下または, pH9.1以上とすると10倍水希釈下でも熱凝固しなかった。
3) 2週間室温 (20℃) に放置し鮮度が低下した鶏卵 (比重1.05) の卵白では撹拌泡立による熱凝固性の低下効果は小であった。したがって, 本処理には適度の鮮度の鶏卵 (比重1.07) 卵白が必要であると思われた。
4) クエン酸, 過酸化水素, 過ギ酸等を添加し撹拌泡立を行なうと熱凝固性の低下効果はさらに増加した。
5) 卵白を超音波照射または紫外線照射を行なうと熱凝固性は低下した。
6) 卵白を基質とし種々の酵素反応を行なったところ, ベプシンと泡立処理を組み合わせたものが熱凝固性の低下に最も有効であった。
7) クエン酸, 過酸化水素, 過ギ酸を添加し泡立処理を施した卵白液を培養液として微生物生育実験 (Eremothecium ashbyii) を行なったところ, クエン酸添加のものでは生育はペプトソ培地と同程度に良好であった。
以上の結果より, 撹拌泡立および, クエン酸等の添加が卵白の熱凝固性の低下に有効であることが判明した。今後は塩類の存在下でも熱凝固しない条件を見いだす必要がある。

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