日本栄養・食糧学会誌
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親ラットに投与した硝酸ナトリウムの乳汁および哺乳仔への移行
有賀 秀子篠崎 晃司三浦 仁美和田 隆祐川 金次郎
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1984 年 37 巻 2 号 p. 177-184

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抄録

硝酸態窒素40, 80および1,000ppmを含有する飲用水をラットに投与し, 硝酸態窒素出納, 繁殖成績および血中, 乳汁中, 仔の胃内容物中の硝酸塩濃度を観察して次の知見を得た。
1) 被験動物の体重100g当たり硝酸態窒素1日摂取量は, 対照群の14μgに対し, 40, 80および1,000ppm投与では, それぞれ436, 900, 10,310μgと, 投与濃度に比例して増加したが, 尿中への排泄率は対照で94%と最も高く, 40, 80ppmでは, 52, 55%, 1,000ppmでは65%であつた。
2) 妊娠率, 正常分娩率および新生仔生存率は, ともに1,000ppm投与では他に比べて低く, とくに冬期間においては硝酸塩投与の影響が顕著に認められた。
3) 血漿中の硝酸態窒素濃度は, 親では, 対照群の0.4μg/mlに対し, 40, 80ppm投与群でわずかに増加したが, 1,000ppm投与群では12.8±1.3μg/mlで, 対照の約30倍であった。
4) 乳汁中濃度は, 無投与の1.2μg/gに対し, 40, 80ppm投与ではそれぞれ2.0±0.3, 2.9±0.2で, 対照の約2~3倍であつたが, 1,000ppm投与では15.5±0.9μg/gと, 高濃度が観察された。
5) 仔の胃内容物中の硝酸塩濃度は, いずれも投与群の影響が認められ, またそれぞれ乳汁中濃度を上まわっていた。
6) 親の血漿と乳汁中の硝酸塩量の相関関係は, いずれの投与群についても明らかに認められ, 乳汁中濃度Mと血漿中濃度Pとの比M/P比は2前後で, 乳汁中での濃縮傾向が認められた。

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