日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
乳酸菌, Streptococcus faecalis R. ATCC 8043のビタミンB6欠乏培地生育菌におけるアミノ基転移酵素の活性
苅谷 泰弘川崎 球子今村 知子
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 37 巻 4 号 p. 333-341

詳細
抄録

1) ビタミンB6不含アミノ酸合成培地に, アラニンの立体異性体 (D-, DL-およびL-) を200μg/ml添加したものに, 200回以上継代培養をくり返したStreptococ-cus faecalis R. ATCC 8043をビタミンB6欠乏アラニン生育菌とした。対照として, アラニン不含アミノ酸合成培地に, ピリドキサールを10μg/ml添加した培地をB6添加培地とし, その培地で培養した菌をB6生育菌とした。
2) アラニン生育菌とB6生育菌の無細胞抽出液のアミノ基転移酵素活性を, アミノ基供与体やアミノ基受容体を変えて, 補酵素の添加されている系と無添加の系でそれぞれ比較した。
アラニン生育菌では, アミノ基転移酵素全活性のうち80~90%がアポ酵素で, ホロ酵素は全活性の10~20%でしかないが, B6生育菌では, ホロ酵素は全活性のほぼ50%を占めており, アラニン生育菌よりもホロ酵素の占める割合は高く, ホロ酵素とアポ酵素の和で示される全活性もB6生育菌が高かった。Streptococcus faecalisR. ATCC 8043の生育1) やアミノ基転移酵素の形成に際して, アラニンが, みかけ上B6に代替しうる効果を示したが, 形成されるホロ酵素量やアポ酵素量に大きな差があることから, アラニソの生理的効果はB6と同一のものではない。
3) アラニソ生育菌とB6生育菌の無細胞抽出液から, 硫安画分, DEAE-セルロース, ヒドロキシルアパタイトおよびセファデツクスG-150ゲルクロマトグラフィーによってアミノ基転移酵素を精製した。B6生育菌から回収率1.6%, 精製度13倍の標品を得た。D-Ala生育菌からは回収率11%, 精製度110倍; DL-Ala生育菌からは回収率3.4%, 精製度65倍; L-Ala生育菌からは回収率5.9%, 精製度40倍の標品を得た。精製酵素は, アクリルアミドディスクゲル電気泳動的には単一なタソパク標品であった。
4) セファデックスG-150ゲルクロマトグラフィーによる分子量測定により, B6生育菌の酵素の分子量を約32,000と測定し, アラニソ生育菌の酵素をいずれも64,000と測定した。
5) B6生育菌の酵素とアラニン生育菌の酵素のPLPに対するKm値はともに5.6×10-7Mと等しく, α-KGAやAspに対するKm値もそれぞれ3.0~6.5×10-4Mと2.2~5.7×10-3Mとほぼ等しく生育因子による明確な差は認められなかった。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top