日本栄養・食糧学会誌
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牛乳中のミネラルの分布
佐藤 明赤井 達男今村 経明
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1984 年 37 巻 6 号 p. 547-552

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抄録

牛乳に含まれるミネラルの化学的形態と機能に関する研究の第一歩として, おもなミネラルの分布を調べた。 実験には, 飼養管理の状態を把握できる本学付属農場のホルスタイン乳牛8頭の個乳を用い, 灰分は500±5℃の乾式灰化, そのなかの金属元素の定量には偏光ゼーマン原子吸光光度計を用いた。 各個乳ごとに脱脂乳, クリーム, カゼイン画分, ホエー, 洗浄クリームを調製し, 灰分と12種の元素を測定した。 リンはモリブデンブルー法で測定した。 全乳から脱脂乳とクリームを分画した場合, モリブデン, 鉄, マンガン, コバルト, アルミニウム, 銅の6元素はクリーム画分に濃縮され, 脱脂乳画分では相当する分だけ希釈された。 濃縮の程度はモリブデンの5.7倍から銅の1.5倍まで, かなりの幅があった。 ナトリウムとカリウムは逆に, 脱脂乳画分へ多く移行した。 脱脂乳から超遠心分離したカゼイン画分とホエー画分とを比較したところ, カルシウム, 銅, 鉄, 亜鉛, モリプデン, リンの6元素がカゼイン画分に濃縮されていた。とくに亜鉛は, ほぼ全量がカゼイン画分中に移った。 ナトリウムとカリウムは逆にホエー画分のほうに大部分が移行した。 レンニソカゼインのミネラル組成は, この超遠心分離カゼインのそれとよく似ていたが, 酸カゼインでは著しく異なり, マグネシウム, カルシウム, 亜鉛, アルミニウム, リンの5元素が少なくなった。 これらのことから脂肪球の表面に存在するミネラルおよびカゼインミセルに結合しているミネラルの分布の特徴を明らかにした。 そして酸カゼインのミネラル組成の特徴から, 酸で解離しやすいミネラルの存在とその種類を確かめた。 以上のように, 牛乳を物理的に分画しそれぞれのミネラル分布を比較することによって, 各画分ごとに以後の研究で対象とすべき元素の種類を確定した。

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