日本栄養・食糧学会誌
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非熱凝固性卵白液の調製法の確立
西川 善之河合 文雄満田 久輝
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1985 年 38 巻 3 号 p. 191-198

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抄録

卵白液を食品工業界等に広く利用するためには, 塩類の存在下で100℃に加熱してもまったく熱凝固しない条件を見いだす必要がある。本問題を解明するために研究を行ない以下の結果を得た。
(1) 卵白を水で4倍以上に希釈し, ガラス棒でゆるやかに撹拌すると白色の繊維状の凝集物が生じ, 本物質をろ過したろ液は100℃で加熱してもまったく熱凝固しない事実を見いだした。
(2) しかし, (1) の場合には食塩 (NaCl) を添加し加熱すると依然熱凝固が起こった。そこで以下に食塩の存在下でも熱凝固しない条件を検討した。
(3) 水希釈時に生ずる凝集物の生成条件について以下の項日を検討した。(1) 希釈倍率, (2) pHの効果, (3) 温度条件, (4) 濃厚卵白と水様卵白の分離, (5) 卵白の保存と凍結融解, (6) 酵素処理, (7) アルコールによる希釈等の検討を試みたが, いずれの場合も, 食塩の存在下ではすべて熱凝固が起こった。
(4) 一方, 水希釈した凝白液をオートクレーブにて120℃, 10分間加熱を行なうと, その後, 塩類を添加しても熱凝固はまったく起こらなかった。
(5) 以上, 非熱凝固性卵白液の調整法が確立され, 本卵白液は, 食品工業や微生物工業等に広く利用できるものと思われる。

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