日本栄養・食糧学会誌
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ニワトリ小腸のマルターゼの精製ならびにその性状
篠原 久枝山田 和彦細谷 憲政
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1985 年 38 巻 6 号 p. 427-433

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抄録

ニワトリ小腸粘膜からマルターゼを精製して, その性質について観察し, スクラーゼーイソマルターゼ複合体のマルターゼ活性と比較した。さらに他の動物のマルターゼと比較検討した。
1) ニワトリ小腸粘膜のマルターゼをパパインを用いて可溶化し, 硫酸アンモニウム分画, セファデックスG-200カラムクロマトグラフィー, DEAEセファデックスA-25カラムクロマトグラフィーを行なうことにより, 電気泳動的にマルターゼ活性と一致する1本のバンドをもつ単一の酵素標品ならびにスクラーゼーイソマルターゼ (S-I) 複合体の部分精製標品を得た。マルターゼのマルターゼ活性は27倍に, S-I複合体のマルターゼ, スクラーゼ, イソマルターゼ活性はそれぞれ7倍, 42倍, 25倍に上昇した。
2) マルターゼはセファデックスに弱く吸着されたが, S-I複合体はセファデックスには吸着されなかった。それらの分子量は, ポリアクリルアミドディスク電気泳動法により, それぞれ260,000ならびに280,000と推定された。
3) マルターゼならびにS-I複合体によるマルターゼ活性のKm値は, それぞれ4.2mM, 1.1mMであり, Vmax
値は, 488および177μmol substrate hydrolyzed/mg protein/hrであった。いずれのマルターゼ活性も, Trisにより拮抗的に阻害され, K1値はそれぞれ51.6mM, 6.9mMであった。また重金属イオンのAg+, Hg2+により強く阻害され, Cu2+, Zn2+により部分的に阻害された。至適pHは, いずれもpH6.0であった。
以上のことから, ニワトリ小腸粘膜から精製されたマルターゼは, 単一の酵素タンパク質であり, その性質は哺乳動物のグルコアミラーゼ活性をもつマルターゼとは若干異なるものであることが明らかにされた。

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