日本栄養・食糧学会誌
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15N-メチオニン導入大豆タンパク質の人工消化
時岡 淳子高橋 満里子亀高 正夫
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1985 年 38 巻 6 号 p. 435-445

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抄録

1) 藤巻らによって開発された「one stepプラステイン合成法」を応用し, パパイン [EC 3.4.4.10] 触媒で15N-Metを導入して15N-Met導入プラステインを合成した。生成プラステインには, Metが2.56mg/16mgN含まれ, 原材料の分離大豆タンパク質 (SPI) の約2倍量に増加しており, Thrに対するMetおよび含硫アミノ酸の比がSPIより上昇し, 全卵タンパク質のアミノ酸パターンに近いアミノ酸組成を示した。また15N濃度は1.05 atom%であることから, 導入した15N-Metの15Nがプラステイン中のMetにのみラべルされていると仮定すると, 生成プラステイン中のMetは理論的に45%が導入された15N-Metであり, 55%がSPI由来のMetであると計算された。
2) このプラステインの人工消化物について, Sepha-dex G-25とG-15によるゲル濾過により得られた各画分中の15N-Metは, ペプシンあるいはペプシン-パンクレアチンによる消化時間の経過とともに, 低分子ペプチド画分中に多くなり, これらの酵素製剤により15N-Met導入プラステインは消化されやすいことが示唆された。
3) 上記酵素製剤によるMet導入プラステインおよびSPIの人工消化率については, TCA不溶部の消化という視点からみると, SPIのほうが高い値を示した。このことは, プラステインがSPIに比べ多量のTCA可溶性の低分子ペプチドを含むことを示すものである。
プラステイン合成反応についてご指導いただいた東京大学農学部農芸化学科食糧化学研究室荒井綜一助教授, 女子栄養大学食品栄養学研究室木村廣子助教授, 同大大学院学生庄子由美子氏に感謝いたします。また, SPI, 全卵タンパク質, 15N-Met導入プラステインのアミノ酸分析の一部を依頼した日本農産工業 (株) 中央研究所の戸塚耕二所長に感謝いたします。

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