日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
アミクサゲルのテクスチャー特性値におよぼす米糠抽出液・食酢の添加効果
今田 節子高橋 正侑
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 39 巻 2 号 p. 107-114

詳細
抄録

岡山県南地域に伝承されているイギス料理の手法, すなわち, アミクサのゲル化に影響する米糠抽出液, 食酢の添加効果を明らかにし, 伝承されてきた背景を知るための研究をすすめ, 以下の結果を得た。
1) アミクサに3%以上の米糠抽出液を加えてアミクサゲルを調製すると, 硬さ, もろさ, 粘性率, 弾性率のテクスチャー特牲値が増加することから, 米糠抽出液中にアミクサのゲル化を促進させる物質が存在し, 機能していることを認めた。
2) アミクサに米糠抽出液を加え, さらに, 1~2%の食酢を添加することは, アミクサゲル調製の加熱時間を短縮させ, アミクサゲルの硬さ, もろさを増加させる効果があった。
3) 上記の事実を検討するため, 米糠抽出液の代りに標品のフィチン酸ナトリウム液を添加した場合には, アミクサ原藻の軟化, 切断が容易であり, カルシウムの溶出が大であった。このことは, 米糠抽出液中のフィチン酸がアミクサのゲル化に関与していることを示すものであった。
以上の結果は, アミクサに米糠抽出液, 食酢を加えて加熱するという岡山県南地域に伝承されてきた特有のイギス料理法が, アミクサの性質を経験的に踏まえたうえになされてきたものであることを裏づけるものであった。
稿を終えるに当たり, アミクサ等の海藻の植物学的分類をお引き受けくださいました山陽学園短期大学大森長朗教授, 試料の入手, 料理作成にご助力賜わりました岡山県邑久郡牛窓町山本満寿一, 時長トクヨ, 服部モミエ, 近成之子, 上野甲の諸氏, また, 種々ご教示くださいました本学藤茂宏教授, フィチン酸などの分析にご援助賜わりました本学菊永茂可友松球美子, 有森三和子の諸先生方に厚くお礼申しあげます。本研究の一部は, 日本食生活文化財団昭和59年度研究助成費によったものである。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top