日本栄養・食糧学会誌
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腸内菌が産生する食欲調節物質 (FS-T) の生理作用
無菌動物・肥満動物に対する効果
津田 とみ大久保 朋一津田 道雄勝沼 恒彦沢村 貞昭
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1988 年 41 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

腸内常在菌に由来する食欲抑制物質 (FS-T) をconventional (conv.) ラット, マウスからみつけた。そこでフンから検出された6種の好気性腸内菌を個別に培養したところ, Proteus mirabilisEscherichia coliの培養液上澄に強いFS-T活性が認められた。Pseudomonas aeruginosaでは弱く, 他の3種にはまったく認められなかった。このことから好気性腸内常在菌のうちではE. coliP. mirabilisなどが主なFS-T産生菌であろうと考えられた。
FS-Tはgerm-free (gf.) フンにはまったく存在せず, conv. では飼料の違いでフン中の含有量が変わった。しかし, conv. とgf. でFS-Tによる摂食抑制効果に差はなかった。
FS-Tの摂食抑制率は, Wistarラットにたいしては0.7 unit/100g BWで44.7%であった。Zuckerラット肥満型 (obese) では同じく0.7 unit/体重100gで44.0%であったが, 非肥満型 (lean) ラットではそれより低く24.7%であった。
FS-T投与による血中成分の変動をobese, leanとWistarとで比較したが, FS-T投与で3者とも血液中のアミノ酸が減少し, グルカゴンはWistarでは変化はないがobeseとleanで2.5倍に増加した。FS-Tは内分泌や代謝にも作用している可能性が示唆された。

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