日本栄養・食糧学会誌
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市販油脂含有食品の脂質の変敗度
原 節子古賀 由里戸谷 洋一郎
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1988 年 41 巻 3 号 p. 219-225

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抄録

自動酸化により油脂はその栄養価を低下し, ひいては毒性を呈することが注目されて以来, 油脂の酸化変質の防止は保健衛生上重要な問題となっている。1977年には油脂含有食品のPOVとAVについて食品衛生法の基準値が定められ, 市販油脂含有食品の品質管理がなされてきた。また近年, 生体内における過酸化脂質の作用についての研究が進められ, 微量の生体内過酸化脂質が種々の疾病や老化現象と関連を有することが示唆されている。さらに食品として摂取された過酸化脂質が生体内で吸収されることも報告されており, 食品中に含まれる微量の過酸化脂質の生体内での蓄積についても検討する必要があると考えられる。本研究においては17種類の市販油脂含有食品の酸化状態を詳細に調査するとともに, 食品衛生法施行前の1975年に行った同様の調査結果との比較を行い, 市販油脂含有食品の酸化の現状と問題点について検討した。
対象とした食品17種 (バターピーナッツ, ポテトチップス, かりん糖, 揚げせんべい, ドーナッツ, クラッカー, プリン, ココア, 食パン, 即席ラーメン, 即席カレー, 味噌, マヨネーズ, 煮干, ソーセージ, サラミソーセージ, まぐろ缶詰) のおのおの12試料についてPOVとAVを測定した結果, バターピーナッツと煮干を除いてそれらの測定値は低く, 食品衛生法の基準を十分満たしていた。さらに7種の食品について1975年のPOVの測定結果との比較から, ドーナッツ, 即席ラーメンでは明らかに低下しており, 品質管理が十分になされていることが判明した。また, ポテトチップス, かりん糖, 揚げせんべい, クラッカーについては1975年と今回の測定結果はいずれも基準値以内で同様の値を示していた。しかし, バターピーナッツでは前回と今回の測定値はともに高く, 過半数が基準値を超えており, 品質管理が十分になされていない状態が続いていることが判明した。品質管理状態の悪いバターピーナッツと煮干について保存期間のPOVに及ぼす影響を検討したが両者には関連がみられず, 保存中の酸化変質ではないと考えられた。したがってバターピーナッツでは原料豆の品質管理, 煮干では製造方法の改善が重要であると思われた。

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