日本栄養・食糧学会誌
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低栄養ラットにおける補体増強剤によるiC3b形成と貧食能について
坂本 元子川野辺 由美子石井 荘子
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1988 年 41 巻 4 号 p. 273-278

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抄録

1) 低栄養状態においてC3を増強することによって細菌感染防御がみられた現象について, 補体系のiC3b形成能とMφの貪食能が高まっていることを証明するために, iC3b形成能の測定法とiC3bとMφのレセプターとの関係について検討した。
2) 異物に対する補体系の反応からMφの活性の関係をみる方法として血清中のiC3b形成能を測定する方法を述べた。iC3b形成能を測定するために抗原抗体補体C3b結合物にHuEを粘着させて起こる反応 (IAHA) を陰転化させる活性で測定する方法を明らかにした。
3) 単球の表面にあるCR3に対するモノクローナル抗体を用いて単球, Mφの貪食が阻止されることから, 異物上のiC3b形成が食細胞のCR3を介した貪食に関係していると考えられる。
4) 低栄養ラットに補体増強剤, Zn-Ch, レンチナンをi. p. で投与し, C3, iC3b形成, Mφの貪食を検討した。3%タンパク質飼料で飼育を続けた非投与群の低栄養が進行したものではiC3b形成は漸次衰退するが, この傾向はC3タンパク量の減少と同じ傾向を示した。しかしiC3b形成能はMφのlatex beadsの貪食能と密接に関係しており, とくにZn-Chやレンチナンの投与によってiC3b形成が高められ, MφのCR3を介して起こる異物の貪食や清掃作用が増強されるものと考えられる。
5) C3の増強がある種の細菌に対して感染防御を示した現象には, 血清中のC3の活性化によるiC3b形成とそのレセプターであるMφのCR3を介しての貪食能が重要な役割を果たしていると考えられる。

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