日本栄養・食糧学会誌
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カルシウムとペクチン質の結合におよぼす陰イオンの影響
金子 憲太郎太田 匡子角野 猛前田 安彦
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1989 年 42 巻 5 号 p. 391-395

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抄録

Ca塩および水酸化カルシウムのCaとペクチン質の結合力の差異を検討した。その際, ペクチン質の水溶液CaCl2, (C6H11O7) 2Ca, (C3H5O2) 2Ca, Ca (OH) 2の水溶液を, 別個に混合・透析した後に各ペクチン質のCa含量を比較した。各ペクチン質のCa含量の差異を結合力の差とした。供試したペクチン質は平均分子量が23,000, 当量重量が598, メトキシル含量が10.1%であった。
1) ペクチン質水溶液のpHは, CaCl2の混合量増加に伴いしだいに低下した。しか, (C6H11O7) 2Ca, (C3H5O2) 2Caを混合した場合は, 混合量の増加に伴い逆に上昇した。Ca (OH) 2を混合した場合は, 混合量がペクチン質の当量の1.5倍以上になると急激に上昇した。
2) 透析後のペクチン質水溶液のpHは, 各化合物の混合量増加に伴い, しだいに上昇した。
3) 透析後のペクチン質のCa含量は, Ca (OH) 2を混合したペクチン質が最も多く, 次が (C3H5O2) Ca, そして (C6H11O7) Caを混合したペクチン質であった。CaCl2を混合したペクチン質のCaは最も少なかった。
4) Ca (OH) 2はペクチン質の当量以上混合すると, ペクチン質に脱メトキシル化が起こり, Caの結合量が急増する。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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