日本栄養・食糧学会誌
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Euglena gracilis zにおける無機イオンの要求性と蓄積
越智 宏倫重岡 成飯塚 義富渡辺 文雄中野 長久北岡 正三郎
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1990 年 43 巻 1 号 p. 54-57

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抄録

Euglenaにおける無機イオンの生理機能の解明を目的としてまずEuglenaの無機イオンの要求性と細胞内蓄積について検討した。
1) Euglenaの無機イオンの要求性を調べるために各無機イオン欠乏培地でEuglenaを培養しその生育に及ぼす影響を調べた。その結果, Zn2+, Mg2+, Fe3+およびMn2+の欠乏がEuglenaの生育を著しく抑制したことから, 少なくともこれらの無機イオンが生育に必須であることが明らかとなった。
2) Euglenaの無機イオンの細胞内蓄積を検討するために各無機イオン過剰培地 (10倍および100倍過剰) にてEuglenaを培養しその細胞内無機イオン量を測定し, その細胞内蓄積について検討した。その結果, EuglenaはNi2+, Co2+, Mg2+, Ca2+過剰により著しく生育が抑制されたが, それ以外のもの (Zn2+, Fe3+, Mn2+, Cu2+) に対して耐性をもっていた。各無機イオン10倍過剰細胞においてMn2+とCu2+は正常細胞の約10倍量を含んでおり, その他のイオンにおいても1.5~6.5倍の蓄積量を示した。また100倍過剰細胞ではCu2+, Mn2+, Zn2+, Ca2+, Fe3+においてそれぞれ正常細胞の約130, 30, 16, 11, 3倍の蓄積量を示した。この結果からEuglenaが生育を全く阻害されることなくCu2+およびMn2+を細胞内に活発に取り込み蓄積する能力のあることが明らかとなった。

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