日本栄養・食糧学会誌
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慢性エタノール投与マウス肝のエタノール代謝系酵素の日内変動
岸本 律子寺澤 紀佐安田 まや子中田 陽造
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1990 年 43 巻 3 号 p. 181-188

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抄録

C3H/He雄性マウス4週齢に, 10% v/v EtOHを16週間投与した後, 肝EtOH代謝系酵素の日内変動を測定して, 次の結果を得た。
1) EtOH投与期間中の摂食摂飲量は減少したが, 摂取エネルギー量は, EtOH由来のエネルギーを加算するとコントロールと差はなかった。EtOH投与によって, 体重増加に差はなく, 肝重量が増加した。
2) 血中EtOH濃度は, 摂食行動と密接に関係し, 慢性, 1日投与とも暗期に最も上昇した (24: 00~2: 00)。慢性投与において, Cyt ADHに大きな変化はなかったが, 血中EtOH濃度がピークを示した時刻 (2: 00) にMsのMEOS, アニリン水酸化酵素, P-450が増加しMsでEtOH酸化能が増大した。MEOSとアニリン水酸化酵素の日内変動のパターンが一致したことにより, MEOSがP-450であることが示唆された。
3) 慢性投与において, Msの高Km値A1DHが2: 00と8: 00に著しく上昇したのは, この時刻に, MEOSが増加したことによって, Msに大量のAc-CHOが産生されたためと考えられる。一方, 同時刻のCytの高Km値A1DHは低下した。
4) 慢性投与において, MitのA1DH総活性は8: 00に上昇, 14: 00に低下し, この変動は低Km値において著明であった。これは血中Ac-CHO濃度の8: 00の低下とそして14: 00の増加と相関関係があった。
5) 1日投与において, 血中Ac-CHO濃度は21: 00に最高値を示し, その後ゆるやかに血中から減少した。慢性投与の場合, 8: 00にほぼ血中から消失したが, 一日中検出された。
6) 慢性投与において日内変動に変化が認められたのは, MEOS, Msのアニリン水酸化酵素, MsとMitのA1DH, 認められなかったものはCytのADHとA1DH, MsのP-450であった。

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