日本栄養・食糧学会誌
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窒素含有多糖類 (キチン) を含むキノコ類中の酵素-重量法による食物繊維の定量-
倉沢 新一菅原 龍幸林 淳三
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1991 年 44 巻 4 号 p. 293-303

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抄録

市販の栽培種8種類を含む47種類のキノコ類に含まれる食物繊維 (DF) の量を酵素-重量法を用い総食物繊維 (TDF) として定量した。TDFの定量と同時に中性界面活性剤法による中性界面活性剤繊維 (NDF) も測定したところ, 半数弱の試料でNDFのほうがTDFより多いという結果となった。
TDFの定量法は, 78%エタノール不溶性画分からタンパク質を差し引いてTDFを求める。しかし, キノコ類にはDFの一つで, その構成元素として窒素を有するキチンが存在する。したがって, 78%エタノール不溶性画分に含まれる窒素量をすべてタンパク質に換算すると, タンパク質は実際より高い値となり, その結果としてTDFが低い値となる。そこで別にキチンを定量し, キチンを補正したタンパク質量を求め, その値を用いてキチンを補正した真のTDFを測定した。
定量の結果を乾燥物基準値で示すと, キノコ類中に平均して, キチンが6.16±2.64%存在し, 見かけ上のタンパク質の平均9.36±3.50%がキチンを補正することにより6.70±3.03%となった。そのため補正前のTDFが平均で40.68±17.36%であったが, 補正後の真のTDFは43.33±16.71%であり, その差は2.64±1.15%であり無視できない差であった。その結果, 前述のNDFがTDFを上回る試料はなくなった。市販の栽培キノコ類においてもほぼ同様な結果となった。このように, 窒素を構成成分とするDFを含むTDFを測定する場合, その窒素を構成成分とするDFをあらかじめ別に測定し, この値を用いてTDFを補正する必要があろう。

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