日本栄養・食糧学会誌
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結球キャベツ葉の熱水可溶性アラビノガラクタンプロテインの性質
木戸 詔子安福 英子東 順一岡村 圭造
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1991 年 44 巻 5 号 p. 403-409

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抄録

水可溶性成分を除去した結球キャベツ葉を, 80℃の熱水で3時間加熱することにより, 可溶化する成分中に存在する糖タンパク質の性質について調べた結果, 次のことが明らかになった。
1) 熱水抽出により, 水可溶性成分での1/4~1/5に相当する糖と1.2倍に相当するタンパク質が溶出した。この熱水抽出物での高分子成分の占める割合は, 多糖では抽出物中に含まれる全糖の12.3%に相当し, タンパク質では4.1%に相当し, 水可溶性成分の場合の6~8倍に相当する高分子成分が得られた。
2) 熱水可溶性高分子成分の分子量分布をSepharoseCL-4Bによるゲル濾過で分析した結果, 糖とタンパク質は, 重なりは認められるがそれぞれ別々の一つのピークとして溶出し, 水可溶性成分のそれとはかなり異なっていた。電気泳動の結果, 数種の糖タンパク質の存在が確認されたので, さらに, イオン交換クロマトグラフィーによる精製を試みた。その結果, DEAE-Toyopearl 650Mのカラムを用い, 0.01Mホウ酸緩衝液 (pH 9.0) でNaClの濃度を0.1~0.3Mに段階的に上げることにより, 4種の糖タンパク質を分離することができた。
3) イオン交換クロマトグラフィーで, 0.15M NaClで溶出した成分 (H-II3) は, ゲル濾過や電気泳動で, 水可溶性AGPのA-II成分と同じ挙動を示した。そのべブチド鎖は, ヒドロキシプロリンを8.2%含むほか, セリン (17.9%), グリシン (12.7%) およびアラニン (11.0%) を多く含み, 糖鎖はアラビノース/ガラクトース/ラムノース/グルコース/ウロン酸=6: 7: 1: 1: 1 (モル比) で構成されているところから, H-II3は水可溶性AGPのA-II成分とよく似たAGPと結論された。このAGPは, 水可溶性AGPのA-IIより2.5倍多く存在していた。
4) 熱水可溶成分の主成分 (H-II4~II6) は, タンバク質を約2%しか含んでおらず, ウロン酸を約74%含むことから, ベクチン様の成分であることがわかった。

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