1993 年 46 巻 3 号 p. 233-239
血漿エタノールレベルに及ぼすココナッツ油の影響を明らかにするため, 5週齢のSD系雄性ラットを用いてin vivoレベルで検討した。その結果, 以下の知見を得た。
1) ココナッツ油 (0.5または1.0g・kg-1体重) をエタノール (1.0g・kg-1体重) 投与の30分前にラットに経口投与すると, 血漿エタノール濃度の最大値が用量に依存して低下し, 血漿エタノール濃度の最大値に達する時間も有意に遅延した。しかし, 血漿エタノール濃度の消失時間には変化が認められなかった。
2) 胃内エタノール残存率はココナッツ油 (1.0g・kg-1体重) の経口投与で有意に高かった。また, 血漿エタノール濃度と胃内エタノール残存率との間には高い負の相関 (r=-0.91, p<0.001) が認められた。
3) ココナッツ油 (1.0g・kg-1体重) を経口投与し, その30分後にエタノール (1.0g・kg-1体重) を腹腔内に投与したときには, 血漿エタノールレベルに対してココナッツ油の影響がまったくみられなかった。
以上の結果より, ココナッツ油はラットの血漿エタノールレベルを用量にしたがって変動させる。その変動のおもな要因は胃内排出速度の遅延によるものと推定できる。