日本栄養・食糧学会誌
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ラット反転小腸におけるβ-カロテンの吸収と代謝挙動
高木 茂明広尾 禎久大田 守也木村 吉伸
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1994 年 47 巻 4 号 p. 287-293

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抄録

ラットにおけるβ-カロテンの吸収と代謝に関する知見を得るために, 反転小腸を用いたin situ系により調べた。この活性測定系においてNADHとニコチンアミドの併用はβ-カロテンの吸収を増加させた。反応系の最適pHは7.7であった。β-カロテン可溶化剤としてのコール酸ナトリウムは10mMまではβ-カロテンの吸収・代謝活性を上昇させた。生成レチノールの大部分はエステルとして小腸から反応液へ輸送されているので, けん化処理が必要であった。新しい活性尺度として“全β-カロテン吸収量”および“全レチノール生成量”を導入すると, β-カロテンの吸収速度 (38~69nmol/g intestine・h) およびレチノール生成速度 (14~36nmol/g intestine・h) は反応液中の基質β-カロテン濃度に大きく依存していた。β-カロテンの吸収率は基質濃度が高くなると減少し, 基質β-カロテン15, 30, 70μMのときそれぞれ10.8, 5.7, 4.3%であった。また吸収されたβ-カロテンのレチノールへの変換生成率は15~75%であり, 吸収β-カロテン濃度に強く依存していた。これらの結果はラット小腸においてβ-カロテンの多くが速やかに開裂したあとレチナールを経てビタミンAに変換することを推測させ, β-カロテン中央開裂の可能性の高いことを示唆している。

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