日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
小腸切除ラットの経腸栄養時下痢発生に対する大豆タンパク質およびパンクレアチン消化物中高分子画分の抑制効果
林 直樹中村 強吉原 大二柳井 稔竹下 保義
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 48 巻 6 号 p. 469-476

詳細
抄録

実験Iでは, 消化管手術後の下痢に対する大豆タンパク質の抑制効果を検討する目的で, 小腸切除ラットの十二指腸内に1kcal/1mlに調製した大豆タンパク質栄養剤 (SP栄養剤), カゼイン栄養剤 (CA栄養剤) および大豆タンパク質とカゼインが1: 2の比率で配合されている混合タンパク栄養剤 (MX栄養剤) を下痢が誘発される投与条件下で5日間飼育し, 下痢の発生率を検討した。
投与3日目の下痢発生率はSP群で6%, またMX群は29%であり, 対照のCA群の53%に比較して顕著な低値を示し, SP群およびMX群で下痢抑制効果が認められた。この抑制効果は5日目においても示された。
実験IIでは, 大豆タンパク質をパンクレアチンで消化した後得られた高分子画分 (HF画分) をCA栄養剤に添加し下痢に及ぼす影響をCA栄養剤およびSP栄養剤と対比し, HF画分が大豆タンパク質の下痢抑制効果の発現に関与する可能性について検討を行った。
投与3日目のHF群の下痢発生率は24%とCA群の78%に比較して明らかな低値を示し, 下痢抑制効果が認められた。5日目においてもHF群はCA群に比較して顕著な低値を示した。一方, HF群とSP群は, 投与期間を通じて下痢発生率に有意差は認められず, 抑制効果は同等であった。
以上, 大豆タンパク質はカゼインに比較して小腸切除ラットに誘発させた下痢を明らかに抑制し, この効果はカゼイン配合量の3分の1を大豆タンパク質に置換しても発現した。さらに, この効果の作用機序の一つとして, HF画分の関与が示唆された。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top