日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
運動および食餌脂肪が高血圧自然発症ラットの血圧, 脂質代謝に及ぼす影響
鈴木 順子畔柳 奈未子松谷 康子伊東 祥
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 49 巻 1 号 p. 39-45

詳細
抄録

SHRに10%のラードまたは10%のサフラワー油を含む2種類の脂肪食 (L食S食) を与えて, 脂肪負荷が血圧変動, 血清脂質および肝臓に及ぼす影響を, さらに自発的走行運動を負荷し, それぞれの非運動群と比較した。
1) 血圧は, 運動開始初期からL, S食とも運動群がそれぞれの非運動群より有意に低値となり, L食でとくに著しかった。両食とも運動群の体重が非運動群を上回る傾向であったにもかかわらず運動群の血圧が低下したことは, 血圧に及ぼす運動の影響が, L, S食において著明な高血圧抑制効果として認められたことになる。
2) 血清脂質値では, HDL-コレステロールはL, S食とも運動群が非運動群より高値の傾向を示した。総脂質, 総コレステロール, 遊離脂肪酸は, 運動群が非運動群よりL食では有意に低値, S食では低値の傾向を示した。トリグリセリドは, 両食とも運動群が有意に低値となり, 運動による低下作用として認められた。
3) S食群で肝細胞に軽度の脂肪変性をもたらしたが, 他の病理組織像ならびに肝機能には影響がなかった。
4) 以上の観察結果より, 運動による血圧上昇の抑制および脂質代謝の改善が証明され, 脂質の負荷による血清脂質値上昇にも有効であることが示唆された。すなわち, 運動が成人病の予防や治療に積極的な意義を有することが実験的にも証明できた。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top