日本栄養・食糧学会誌
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ラットにおける自発運動による骨格筋肥大の性差について
田中 紀子林 國興堀 清記
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1997 年 50 巻 2 号 p. 111-117

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抄録

離乳直後の雌雄ラットに自発運動を長期間行わせ, 運動が引き起こす筋肥大に雌雄の差があるのか, タンパク質代謝と形態学の両面より調べた。得られた結果は以下のとおりである。
1) 7週間の雌の運動量は平均約10km/dayであり, 雄の約4km/dayの2倍以上にも達した。雄では自発運動による体重増加の抑制が起こったが, 雌では運動による体重の変化はなかった。
2) 長期間の自発運動によって雌雄ともに骨格筋重量は増加し, 筋肥大が起こった。運動量と筋重量との間には有意な正の相関関係があり, 筋重量は運動量が増加するにつれて増加した。また同じ運動量であれば雄の筋重量は雌のそれより大きかった。
3) 筋腹中央部に現れた筋線維の形態には雌雄の差があり, 雄の線維は雌より面積は大きく, 線維長は長かった。しかし, 総線維数には雌雄の差はなかった。自発運動により線維長は伸長し, 線維数は増加した。その増加率は運動量の多い雌の方が大きかった。
4) 筋タンパク質分解の間接的指標である3-methylhistidineの尿中排泄量は雄では変化しなかったが, 雌では運動により有意に減少した。
5) 骨格筋DNA, RNA量は雌雄ともに運動により有意に増加した。タンパク質当りのRNAが増加することから, 筋タンパク質の合成は雌雄ともに促進すると考えられた。
以上の結果からラットに自発運動を長期間行わせると雌雄ともに筋腹中央部では筋線維の長さが伸長し, 綿維数が増加することによって筋肥大が起こることが明らかにされた。筋肥大にいたる代謝経過としては雌雄ともにタンパク質合成が促進することによることが推測された。

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