日本栄養・食糧学会誌
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加熱殺菌方法の異なる市販牛乳タンパク質のペプシンによる消化性
坂井 堅太郎小川 路恵高嶋 治子水沼 俊美真鍋 祐之
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1997 年 50 巻 2 号 p. 147-152

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抄録

加熱殺菌方法の異なる3種類の市販牛乳 (低温殺菌, 高温短時間殺菌および超高温殺菌牛乳) に含まれるタンパク質成分のペプシンに対する消化性を, SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法と, 牛カゼイン, 牛α-ラクトアルブミンおよび牛β-ラクトグロブリンに対する特異抗体を用いたウエスタンブロット法により検討した。カゼインは牛乳の加熱殺菌方法の違いに拘らず, ペプシンにより速やかに分解された。低温殺菌および高温短時間殺菌牛乳中のα-ラクトアルブミンはペプシン消化に対して抵抗性が認められた。超高温殺菌牛乳では, α-ラクトアルブミンのペプシン消化に対する抵抗性はやや減少したものの, 十分に維持されていた。低温殺菌と高温短時間殺菌牛乳中のβ-ラクトグロブリンは, α-ラクトアルブミンと同様に, ペプシン消化に対して抵抗性を示したが, 超高温殺菌牛乳では, ペプシン消化に対する抵抗性はほとんど消失し, カゼインでみられるペプシン消化のパターンに類似していた。ラットに低温殺菌または超高温殺菌牛乳を強制的に経口投与し, 胃内容物中のβ-ラクトグロブリンの消化を調べたところ, 超高温殺菌牛乳投与ラットの消化度は低温殺菌牛乳投与ラットに比べて明らかに高かった。これらの結果から, 市販牛乳中の各タンパク質成分のペプシンに対する消化パターンは異なることが示された。また, 超高温殺菌処理によって, β-ラクトグロブリンのペプシン消化に対する抵抗性が著しく消失することから, 超高温殺菌牛乳はβ-ラクトグロブリンのアレルゲン性が緩和された牛乳としての有用性が示唆された。

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