日本栄養・食糧学会誌
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しらす干しカルシウムの可溶化に及ぼす柑橘果汁の影響-in vitroでの検討-
新居 佳孝福田 和弘清蔭 亮子坂井 堅太郎山本 茂
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1997 年 50 巻 6 号 p. 439-443

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抄録

徳島県では, スダチが主要な柑橘類として生産されており, カルシウムを豊富に含む食品であるしらす干し (ちりめんじゃこ) にスダチ果汁をかける食習慣がある。そこで, われわれはちりめんじゃこのカルシウムの可溶化に及ぼす柑橘果汁の影響を検討した。その結果, ちりめんじゃこにスダチ果汁, レモン果汁またはユズ果汁を添加すると, 約50%のカルシウムが可溶化し, 以後70分後まで上昇した。ちりめんじゃこからのカルシウムの可溶化は, スダチ果汁のpHを中性やアルカリ性に調整した場合でも観察された。また, スダチ果汁には, 主要な有機酸としてクエン酸が60mg/ml含まれており, ちりめんじゃこからのカルシウムの可溶化には, スダチ果汁に含まれるクエン酸の関与が示唆された。ちりめんじゃこにスダチ果汁を加え, ペプシン, 次いでパンクレアチンで処理した場合, ほぼ100%のカルシウムが可溶化したが, スダチ果汁の代りに米酢や水を用いた実験では, 約50~60%の可溶化を示した。以上より, ちりめんじゃこにスダチ果汁をかける食習慣は, in vivoにおけるカルシウムの吸収を上昇させることが示唆された。

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