日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
クローズドコロニー (ICR系) 雄マウスの0.9%食塩水嗜好と塩味識別閾値との関係
一條 優華出嶋 靖志高坂 宏一
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 52 巻 2 号 p. 97-101

詳細
抄録

クローズドコロニーのICR系雄マウス, 332匹について0.9%食塩水に対する taste preference (0.9% preference) を two-bottle test により調べた。平均値±標準偏差 (SD) は45.5%±19.1, 最低値は4.2%, 最高値は94.5%で正規性の分布を示した。0.9% preference の強弱と味覚の鋭敏さとの関連を調べるため, 332匹のうち61匹について, 0.9% preference が64.6% (平均値+SD) 以上の個体を Group H, 26.4% (平均値-SD) 以上64.6%未満を Group M, 26.4%未満を Group Lとして, 3群の salt taste threshold を測定し, 比較した。Group Hが最も低い threshold (0.0125%) を示した。Group Mは, Group Hより2段階濃い濃度 (0.05%) に threshold が認められた。一方, Group Lの threshold は0.4%までの間には認められず, より高濃度の段階に threshold が存在する可能性が示された。各濃度の食塩水に対する preference をみると, Group Hは threshold より濃いすべての濃度に対して, 他の2群より強い preference を示した。また, 0.4%食塩水に対する各群の preference の違いは, 文献に示されている近交系マウスの系統差に匹敵する大きさであることがわかった。以上の結果は, ICR系雄マウスの preference の個体差は大きく, preference の強弱に味覚の鋭敏さが関与していることを示しており, ICR系雄マウスを用いて味覚に関する実験を行う場合, 個体差に配慮した実験計画が必要であることが示唆された。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top