日本栄養・食糧学会誌
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食餌脂肪酸の組織脂肪酸組成に及ぼす影響
入谷 信子木村 智恵福田 ひとみ杉本 智美
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2000 年 53 巻 6 号 p. 249-257

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抄録

食餌多価不飽和脂肪酸 (PUFA) は, 急速に (1時間以内に始まる) 選択的に組織脂質に取り込まれ脂肪酸合成を抑制するが, モノ不飽和脂肪酸 (MUFA), 飽和脂肪酸 (SFA) は食後急速に代謝され, 組織ではおもに内因性であることを先に報告した。そこで今回は食餌PUFA, MUFA, SFA量を変化させてラットに体重当り等カロリーの食餌を1または2週間投与し, 組織総脂質の脂肪酸量に対する影響を調べた。(1) ラットに0-20%オリーブ油, コーン油または魚油食を投与したとき, 血漿, 肝臓のPUFA量は摂取量とともに大きく増加したが, MUFA量は大量の摂取でも有意に増加しなかった。血漿コレステロールエステル脂肪酸組成も同様であった。肝臓脂肪酸合成系酵素活性とトリアシルグリセロール値は食餌PUFA量が増えるとともに低下した。(2) 食餌中のMUFA, SFA量が増えてもPUFA量を一定にすると, 血漿, 肝臓, 脂肪組織脂肪酸量に有意な変化は見られなかった。すなわち, 組織PUFA量は食餌PUFAを反映するが, 組織MUFA, SFAはおもに内因性であるので食餌MUFA, SFAを反映せず, その合成量は食餌PUFAにより制御されると考えられる。

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