日本栄養・食糧学会誌
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肥満の分子遺伝学的研究と治療効果
平成12年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞
坂根 直樹
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2001 年 54 巻 2 号 p. 101-109

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抄録

本邦でも食生活・ライフスタイルの欧米化に伴い, 糖尿病をはじめとする生活習慣病が急増しており, その基盤となる肥満対策が急務とされる。近年の分子生物学の進歩により肥満が発症するメカニズムも分子レベルで明らかになってきた。レプチンやレプチン受容体に単一遺伝子異常があれば高度肥満を呈するが, 世界的にも非常にまれである。双生児のコホート研究により, 内臓脂肪蓄積には遺伝が強く関与する。1995年, その候補遺伝子として, 熱産生と脂肪分解に関わるβ3-アドレナリン受容体遺伝子のミスセンス変異がピマインディアンにおいて発見され, 熱産生機構の異常, シンドロームXの特徴, 加齢に伴う体重増加, さらに糖尿病早期発症と関連すると報告された。本変異をもつ肥満女性は安静時代謝量の減少に加え, 脂肪分解能が低下しており減量困難であるため, 本変異は痩せにくさを決めるSNPs (一塩基多型) とも考えられる。本稿では, 肥満関連SNPsについても概説する。

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