生体丸ごとでのエネルギー出納の調節とその異常について, エネルギー消費の自律的調節機構に焦点を当てて研究を行い, 1) 非ふるえ熱産生の特異的部位である褐色脂肪組織が, 食事摂取の増減に適応しながら視床下部-交感神経系を介してエネルギー消費量を調節する役割があり, その機能異常が肥満の発症・進展に寄与することを, 各種の実験動物を用いて個体レベルで解析証明し, 更に, 2) 熱産生のキー分子であるミトコンドリア脱共役タンパク質 (UCP) について, 独自に樹立した褐色脂肪細胞株を用いて遺伝子発現調節機構を明らかにした。この過程で, 3) 交感神経性の刺激によってUCPが褐色脂肪組織のみならず白色脂肪組織にも発現し, それによって肥満が軽減されることを見い出した。これらの知見は, 褐色脂肪細胞やUCPが抗肥満プライマリーケア食品開発の有望なターゲットであることを示唆している。