日本栄養・食糧学会誌
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X線照射により誘発した染色体損傷に対する茶カテキンの抑制効果
杉澤 彩子梅垣 敬三山田 和彦
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キーワード: カテキン, 染色体損傷, X線
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2003 年 56 巻 2 号 p. 85-90

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抄録

X線により誘発した染色体損傷に対する茶カテキンの抑制効果を小核試験法を用いて検討した。マウスに茶カテキン抽出物 (10-300mg/kg体重) を7日間経口投与した後, X線 (0.5Gy) を照射し, 末梢血を用いた小核試験法により骨髄染色体損傷度を評価した結果, 茶カテキン投与は骨髄染色体損傷の抑制傾向を示した。茶カテキンの放射線防御効果をさらに詳細に検討するため, 培養細胞 (ヒトリンパ芽球培養細胞: WIL2-NS) を用いたin vitro 実験を行った。細胞を主要な茶カテキンであるエピガロカテキンガレート(EGCg) とインキュベーションし, その後洗浄してX線 (0.5Gy) を照射し細胞質分裂阻害小核試験法により染色体損傷度を評価した。その結果, 高濃度 (10μM) のEGCgは染色体損傷を抑制したが, 生理的な濃度 (1μM以下) では抑制しなかった。EGCg溶液にX線を照射すると著しいEGCgの減少が観察されたことから, EGCgはX線と直接的な反応を示すと考えられた。以上の結果から, 茶カテキンはX線照射による染色体損傷を抑制する可能性はあるが, その生理的な濃度においてはX線による染色体損傷を抑制できないと考えられた。

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