日本栄養・食糧学会誌
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食と病-生活習慣病を例として
渡辺 毅
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2004 年 57 巻 1 号 p. 15-19

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抄録

戦後日本では, (1) 高度経済成長によって感染症や栄養不足が克服されて到来した長寿社会 (高齢化社会), (2) 摂取熱量は大きな変化はないが, 急激な生活様式の欧米化に伴う, 炭水化物の激減, 脂肪 (とくに, 動物性脂肪) の激増を特徴とする摂取栄養素構成の変化, (3) 身体活動の低下を原因とする平均肥満度 (とくに, 内臓脂肪肥満) の増加などの要因によって糖尿病, 高脂血症が激増した。高血圧は, 食塩摂取の減少とともに戦後40年は低下傾向にあったが, 最近は肥満 (インスリン抵抗性) に関連した高血圧の増加と食塩摂取の再増加によって下げ止まっている。その結果, 動脈硬化性疾患は増加し, 心筋梗塞と脳血管障害を合計すると死因第1位であるがんと匹敵する。また, 細小血管障害である糖尿病性腎症, 網膜症, 神経症や高血圧による良性腎硬化症は, 国民の健康寿命を低下させている。一方, 生活習慣病は多遺伝子病で, 進化の過程 (飢餓の歴史) で有利だった (倹約遺伝子) ため保存され, 今なお多数の国民が生活習慣病発症の予備軍である。いまなすべきは, 適切なカロリー摂取, 動物性脂肪制限, 有酸素運動, ストレス解消法と食塩制限であるが, 解決すべき研究課題も多く残されている。

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