日本栄養・食糧学会誌
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日本型食品素材成分の脳機能調節作用
畠山 英子
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2005 年 58 巻 2 号 p. 107-111

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抄録

気分状態プロフィルテスト (POMS) により, 小中学生の心の状態について調べた結果,「怒り-敵意」尺度得点が有意に高いことが明らかになった。POMSのデータと食環境を調べたデータをクロス分析したところ,「怒り-敵意」高得点群は日常の食生活において日本型食品素材の摂取率が低いことがわかった。大学生被験者の協力を得, 日本型食品素材が心身の健康に及ぼす影響について詳しく調べた。日本型食品素材に着目し, 栄養所要量を充たすバランスの取れた食事を摂取してもらう実験を試みた。5日間の実験前後に採血による生化学検査を実施したところ, 男子に多かった中性脂肪高値異常と女子に多かった総コレステロール高値異常が改善された。POMSによる「怒り-敵意」,「緊張-不安」,「抑うつ-落ち込み」ならびに「疲労」の尺度得点も好転した。これらの結果を基に, 日本型食品素材成分がヒトの脳機能調節に及ぼす影響について明らかにする実験を試みた。日本の代表的な食材である緑茶と大豆に着眼し, 玉露茶の旨味成分であるL-γ-グルタミルエチルアミド (テアニン) と大豆タンパク質の酵素加水分解物 (大豆ペプチド)を試料に用いた。脳血液動態の把握をはじめ非侵襲的な手法を適宜用い, ヒトを直接的に計測する実験を行った。近赤外線分光分析法 (NIRS) による各種課題遂行時の酸素化ヘモグロビン濃度を指標にした前頭部脳血液量の毎秒計測データは, テアニンもしくは大豆ペプチドを摂取した場合と非摂取 (プラセボ) の場合で異なっていた。摂取時はプラセボに比べ, 課題遂行に伴う計測値の増加程度が低いレベルで推移した。また, テアニン摂取後のPOMS尺度得点の低下も認められ, テアニンの気分状態改善効果が確認された。さらに大豆ペプチド摂取の場合はプラセボに比べ, 課題遂行後の唾液コルチゾール濃度が低く, ストレスを抑制する効果が示唆された。これらの結果からテアニンや大豆タンパク質の酵素分解物は脳機能を調節したリストレスを抑制する効果を有することが示唆された。日本型食品素材成分は体のみならず心の健康に資するものと推察され, 高齢社会における役割が期待されるものと考えられる。

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